松柏美術館


日本を代表する女流日本画家に「上村松園」。

女性の視点から描いた女性像が様々な面で表現されている絵が多い。

奈良市登美ヶ丘の閑静な住宅街に松園の美術館「松柏美術館」があります。

テレビで紹介されていたのをきっかけに行ってみることにしました。



近鉄電車「学園前駅」を下車。

美術館まで、散歩がてら周辺の土地柄も楽しむことにします。

駅前を過ぎると閑静な住宅街。

空も高く心地よい。

凝った作りのイラリアンレストランがあったりして

少しハイソな人たちの町のような気がします。



しばらく歩いていくと

綱引きをする子供たちの銅像を背に公園が見えてきました。

木々に囲まれて心地よい雰囲気。

少し寄り道をすることに。

大渕池公園というらしい。




入り口のところで写生されている方もいて

なんとなく芸術が馴染んでいる所なんだなと感じます。

公園内がなかなか素敵。

木々が舞台を囲む観客のよう。

初老夫婦や子供連れの夫婦がゆったりと楽しんでいます。

秋の芳醇な風を楽しみながら一休み。



公園を出ると大渕池。

橋を渡ると

辺りに「松柏美術館」があります。

窓のない四角い形が重なるような建物です。

右手に池を見ながら

庭の小道を通り入り口へ。

ここは松園の住まいを改装した美術館らしい。

ガラス張りのドームの入り口がお出迎え。

館内は清潔感のある近代建築です。





早速、観覧です。

やわらかいしぐさや

女性ならではの美意識があります。



ほのかな色気が漂います。


オーソドックスな美人画を描いてきましたが

スランプにおちいります。

時代が変わり

肌をあらわにする刺激的な絵が

広がり、松園の絵は古臭いと言われだしたのです。



楊貴妃


時代の流れに合わせた少しエロティック絵にしたのがこの絵。

描かなかった胸まで描いています。


とても大きな作品で

スケッチも原寸で描いていました。


人物が人間と同じくらいなので

大きさも想像つくでしょう。

こういう絵を見ると燃えてきます。

これを描いた後には胸を強調した絵がちらほら描かれています。

鮮やかで美しい。



「焔(ほのお)」

こちらも代表作。

女性の激しい情を描いています。

これもいままでなかったことです。


刺激的な画風もやがて落ち着き

再び正統派へ

けれどテイストは残しています。





花がたみ」

秋らしい妖艶な一枚。

この絵も大きく、下絵も展示されています。

何枚も紙を貼り合わせて

修正部分に紙を貼り、手直しをしています。

絵を描く者としては大変興味深い。





「唐美人」

これは左右12mもある超大作。

広い部屋の片面いっぱいをつかって展示しています。

唐の時代の美人を見初める若者を描いたもので

世界観に入り込みそうな気持ちになりました。





松園の息子さんも有名な日本画家です。

「上村 松篁」

この方の展示会を京都で観たことがあります。

お母さんと違って人物画は少なく、

鳥などの生き物を美しく描いています。

息子さんや松園のお弟子さんの作品もいくつか展示しています。


美術館に行くと刺激を受けて

猛烈に絵を描きたくなります。

大事なことだと感じます。



美術館の裏が旧家。

入り口に煉瓦造りの煙突が見える広そうな日本家屋です。

脇にはちょっとした散歩道があります。

竹林が青々して、空を背景に気持ちがいい。

美術館の屋根から広がる周辺の街並みを楽しむことができます。

彼岸花の赤が、アクセントで美しい。



旧家は喫茶店になっていて

お茶を楽しめます。

和菓子セットというものがメニューにあり

頼んでみることにします。

中に入ると立派な日本庭園。

こんな素敵な環境で絵を描かれていたのです。

旧家の庭先を利用した喫茶。

腰掛けながら庭を鑑賞します。

和菓子セットは、抹茶と和菓子です。

和菓子は柿で有名な奈良らしく柿風味。



静かで優雅な時間を過ごせました。